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ねおゆうきの日々のメモ

息子とサッカー

ニューヨーク州の取り決めで、スポーツ系の部活は7年生(ミドルスクール2年生)になるまで参加できないことになっている。学年が上がったらスポーツができることを楽しみにしていた息子が、この秋、7年生になって張り切って入部したのは、サッカー部だった。 先日、真っ白な22番のユニフォームをもらってきた。

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実は、このユニフォームをもらって一番喜んでいるのは、他でもないこの私かもしれない。ここに至るまでに、紆余曲折、とまでは言わないけれど、ちょっぴり痛い思いもしてきたので。

ーー以下、その痛い過去の回想録ーー

男の子を持つ母親の多くがそうであるように、私もご多分にもれず、ボールを追いかけて機敏に走り回る我が子を思い描いて、息子には5才のときからサッカーを始めさせた。子は親の思う通りにならないという言葉を実感するようになったのは、この頃からだ。我が子は、機敏にボールを追いかけて走り回るどころか、ボールに背を向けて、一カ所に立ちすくんでしまうような子だった。そんな姿にヤキモキ、イライラしたものだ。 『継続は力なり』という言葉を信じているので、それでも毎週練習に参加させているうちに、好きなスポーツは、「サッカー」と答える息子に変わっていった。

そして息子が小3になったばかりの頃、ニューヨークに転勤で引っ越すことになった。楽しく通っていた小学校だったのに、やむ無く転校となった。1学期の終わりに大好きだった先生や友達に別れを告げ、8月に入ってから日本を立ったので、秋から新学期の始まる現地校の始業日が数週間後に迫っていた。英語がわからない上、内向的な性格の息子を新しい環境に早く馴染ませるにはスポーツしかない、と思ったので、さっそく地元のサッカークラブを探したところ、どのチームも秋からのチーム編成のためのメンバーの登録が、6月の時点で締め切られていることを知る。仕方なく、唯一まだ登録を受け付けていた隣町のサッカークラブに所属させた。

そのチームは学区が違ったので、同じ学校に通う子供が一人もいない。それが面白くないと息子も言うので、1シーズンそこで過ごしたあと、同じ学校の子供たちが入っているサッカークラブにようやく登録。しかし、ほっとしたのも束の間、小4からはトラベルチームへとレベルアップしていくのだが、小3の終わりにその選抜チームのトライアウトに臨んだところ、もともと運動神経のよろしくない息子は、悲しいかな、落とされる数名の中に入ってしまったのだ。

サッカーが好きなのに、上手くないからチームに入れないという、9才の男児に突きつけられた厳しい現実だった。私もどう息子に説明すべきか戸惑った。 またまた、受け入れに優しい隣町のサッカークラブに戻る。しかし、受け入れに優しいだけに、集まるのは、息子と同じような境遇の子供たち。どこと対戦しても負け試合が続き、しかも違う学区から参加しているのは息子だけ。息子にとっては面白くないこと続きで、ついに「もうサッカーはいい」と言い出した。

せっかく今まで続けてきたのに、そんなことで止めさせては負け犬も同然ではないか。とはいえ、どうやら息子にはサッカーの才能はなさそうだ。早めに諦めて、なにか他に向いていることを探すほうがいいのかもしれない、...という思いの狭間で迷った末に、しばらくサッカーから離してみることにした。 それから数年、サッカーボールを蹴って遊ぶことも次第に減り、大事にしていたボールは愛犬のオモチャと化していった。

が、7年生になる前の夏休み、秋から部活をやるなら好きだったサッカーをやらせたくて、最後の悪あがきのつもりで2週間、サッカーキャンプに入れてみた。入部するためのトライアウトになんとかパスさせたいという、付け焼き刃的対策だ。が、これが良いキッカケになったのだ。炎天下、一日中ボールを蹴って、サッカーへの興味が再燃。そして新学期になってトライアウトにも無事パスすることができ(実は、今年は幸い定員を超えず、全員パスしたらしいがー笑)、晴れてチームに入ることができたのだ。

同じ学校の仲間たちと同じチームでプレイするという、フツーにできそうなことをするのに随分苦労したものだ。それゆえ、スクール名の入ったユニフォームを手にしたことが嬉しかった。自分が一番ヘタクソなんだよ、と自嘲しながらも、毎日張り切って練習を続けている。練習のこと、仲間のこと、コーチの言った冗談や、自分はボールの片付けを担当していることなど、生き生きと話す息子だった。チームの一員となって皆と行動することが何より嬉しそうだ。

そして、先週木曜日。ホームゲームだったので、カメラを抱えて見に行った。 背番号22、いたいた!走ってる、走ってる!出してもらえたんだ。息子にとっての初出場試合だ。相変わらずオットリだけど、フィールドを走る息子に、もう幼さはない。白いユニフォームが眩しいぞ!「頑張れ〜!」と声援を送りながら、彼の背中を追う私だった。

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